選挙市民審議会第11回第2部門審議会
2017年3月22日(水)17:00-19:00、衆議院第1議員会館地階第7会議室にて、とりプロ選挙市民審議会の第11回第2部門審議会が開催されました。議題は「各委員の選挙制度案についての検討(2回目)です。
主に桂協助委員の衆議院選挙制度案について審議しました。参考書として、資料的価値の高い桂委員の著書も配付されました。
桂協助委員
同一選挙区においては一政党一候補者に限ることは必ずしも被選挙権制約とは言えない。政党は広域候補者を立てることができるのだから。両者はペアで選挙運動をたたかう。
比例代表制と選挙区制を組み合わせることは政党の吟味と人の吟味を併せ持つという意義がある。
小選挙区制のもと政策論争は低下している。候補者を立てる政党が減少したからだ。多くの政党が候補者を立てやすくすれば政策で選ぶ選挙になる。
2人区と3人区という人数は、各政党が一人を立て、かつ比例の意義が達成されるちょうど良さに根拠がある。
政党には民意を集約する機能がある。「民意の反映」の対義語としての「民意の集約」という言葉使いを止めるべき。
只野雅人共同代表
桂案の場合、公職選挙法に書き込むべき「政党の定義」はどうなるのか。現行の政党要件(候補者届出政党)との関係は。届出に任せるという理解で良いか。
有権者は名簿の無い広域候補者を直接選べないということで良いのか。重複立候補はできるのか。
一票制というところに課題があるようにも思える。
政党要件は比例代表制一本の制度ならば比較的楽に設定できる。例えば、議員定数の何%の得票など。
比例一本の場合、「政権の安定」と言われる課題をどう考えるのか。
太田光征委員
桂案は人を選ぶ要素に乏しく大政党のみを選ぶことになる。現行と政党の定義も変わらない。たとえば、公認を外れたら同一選挙区から実質的には同じ政党の候補者も立候補しうる。
同一政党の中でも重要政策で割れている現実を見ると、一政党一候補に絞ったからといって政策選挙になるか疑問が残る。
阻止条項を設けることは民意の集約ならぬ「政党の集約」。これも民意の切り捨ての一つではないか。
死票が出れば民意の切り捨てが起こる。民意の反映の範囲は程度問題にすべきではない。平等な国民主権の実現のために死票を最小化する制度を。
小林五十鈴委員
制度改正とともに考えたいことは、「どうせ選挙に行っても何も変わらない」という有権者の声。これを変えたい。
選挙運動をもっと自由にできるようにしたり、供託金をなくしたりしたい。
小選挙区制には反対。立候補者をもっと多く出せる制度にして、有権者がしっかりと学んで選べるようにしたい。今でも「3バン」が通用し、ただ名前が知られているだけで当選が得られている。地域の選挙を変えていきたい。
田中久雄委員
桂案のポイントは政党の定義。大政党がなりすましで複数候補者を立て、選挙区の独占を狙いうる。比例票が減るリスクはあるが。北欧では政党の定義がしっかりとなされている。
桂案で、2人区・3人区と分けて、選挙区定数を一本化しない理由は何か。
一票制は新規参入したい政党の門戸を閉ざしていないか。
選挙という仕組みを用いる限り、民意の反映と言いながらも、ある種の集約が起こる。
小党乱立の何が悪いのか。ドイツの阻止条項はナチスの台頭に対する反省から生まれた。日本の場合はない方が良い。選挙後の院内の会派づくり(多数派形成)は、選挙制度の課題範囲ではない。
クーザー・イーゴー
スイスのフリージャーナリスト
ドイツでは小選挙区比例代表併用制のもと政党が強くなりすぎた。しかしEUもあるので、強い政党が必要かもしれない。
桂案を現在の政党の勢力/得票にあてはめるとどのような国会の議席分布となるのか。ゆるやかな多党制になり連立政権が常態化することが日本の政治状況に合うかどうか。
ヨーロッパでは確かに表向きは重要政策で政党内議論は割れていない。そこは広報の上手さもあるかもしれない。内部では政策の幅は個々の議員で相当に広い。
今後も選挙市民審議会を取材し発信していきたい。
城倉啓
とりプロ事務局長
「比例代表制と選挙区制を組み合わせた制度を採ること」までは合意されていない。「比例代表制一本」が持論の委員もいる。大きな考え方の整理も必要では。
比例代表のみを採る場合、必ず「小党乱立」という批判が起こる。これにどう応えるのか。阻止条項は一つの応え。
議員定数の定め方という重要論点もある。今でも小政党にとって、国会の委員を複数務めることが負担となっている。委員会数を基礎として議員定数を算定する場合、比例代表制とのかみ合わせはどうか。
次回第2部門審議会では、田中久雄委員の衆議院選挙制度私案、およびフランスの選挙制度について(只野共同代表担当)を審議することになりました。乞うご期待。
【今後の選挙市民審議会の予定】
4月3日(月)15:00-17:00 第3部門審議会 衆議院第2議員会館地階第5会議室
4月6日(木)17:00-19:00 第1部門審議会 衆議院第2議員会館地階第8会議室
4月24日(月)10:00-12:00 第2部門審議会