とりプロなう98号

2018年7月2日、衆議院議員会館にて、第2期選挙市民審議会の第4回目の審議会が開催されました。

この日の審議内容は、選挙運動費用の上限設定についてでした。

小林幸治委員より具体的な提言案をいただき、それに基づいて活発な審議がなされました。

         小林幸治委員
         小林幸治委員

 

小林幸治委員

 

以下の提言案ではどうか。

大前提として「選挙運動」と「政治活動」の区別をなくす。

その上で、候補者の届出の日から投票日までを「選挙前政治活動(選挙運動)期間」とする(新概念)。選挙前政治活動期間における政治活動の上限額を、現行を参考にして定める。現行の最大額は27,763,200円(北海道6区)、最少額は22,674,200円(鳥取1区)。

現状を参考にして、上限額の一割程度を公費負担とする。たとえば、選挙制作パンフレットの作成費・ポスター作成費などを公費で負担する。

選挙前政治活動期間を、憲法54条に基づいて投票日の30日前に設定する(「解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ」)。そして投票日の14日前から不在者投票・期日前投票を受け付ける。

選挙前政治活動期間の収支については、その報告書を候補者が選挙管理委員会に提出する。選管は適正かを確認し、保存し、インターネット上で公開する。市民からの異議申し立てを期待して。

選挙前政治活動は、あらゆる政治活動を含む。選挙前に行われるというだけが異なる。参院選のみ100日間としても良いが、有権者の混乱もありうるので一律30日。制限対象を絞ると現行法に近づかないか。選管実務者からも意見を聴取したい。また政治資金・政党助成金の視点から、改正案を練り上げ積み上げてもらいたい。

         小澤隆一委員
         小澤隆一委員

 

小澤隆一委員

 

投票日の40日前から30日前まで10日しかないが有権者数を把握し名簿の調製ができるか。特に3-4月の人口移動期に。

10日間しか立候補の心の準備期間がないということは、ゆっくり決断する人にとってはスタートラインが公平ではないのでは。

政治活動は自由と謳っておいて、罰が厳しいと気の毒。たとえば法定額以上の活動をしてしまったら超えてしまった金額を国庫に収めるという罰もありうるのでは。

「国政選挙と選挙運動と政治資金との関連」というグランドデザインに関するテーマを担当したい。

      岡﨑晴輝委員(*スカイプ参加)
      岡﨑晴輝委員(*スカイプ参加)

 

岡﨑晴輝委員

 

小林案では、候補者の届出・公表を「投票日を基準日として30日前」に設定し、そこから投票日までを「選挙前政治活動期間(選挙運動の期間)」としている。だが、候補者の届出・公表を「30日前」に絞らなくても良いのではないか。たとえば、「任期満了から100日前」から「投票日から30日前」までの期間における届出・公表を可能にすれば、これまで検討してきた諸問題を解決できるのではないか。

選挙運動と政治活動の区別をなくすとなると、選挙運動費用収支報告を政治資金収支報告書に統合したほうが良いのではないか。

        片木淳共同代表
        片木淳共同代表

 

片木淳共同代表

 

選管の実務としては現状でも10日で十分調製できる。

憲法54条を根拠にできるか。任期満了の際は別か。今までの議論では、選挙運動規制をなくすけれども手続規定は必要、期間の定めのないドイツでも100日ぐらい前に届出はしている、障害者などへの配慮も必要なので期間は長い方が良いというものだった。30日は短く感じる。

「選挙前政治活動」の定義は何か。現行の「選挙運動」「政治活動」との違いは。定義をしないと収支報告ができないのでは。イギリスのように項目立てをするのか。また定義をしないと制限の対象範囲も定まらない。

収支報告の「適正」の基準は何か。厳しく取り締まると選管の実務も重くなる。

        三木由希子共同代表
        三木由希子共同代表

 

三木由希子共同代表

 

提言案は、「憲法54条に40日以内とあるのに個別法で40日以上を書き込めないのではないか」という問題意識からのものだろう。

期間を設定するということは、立候補に対する制限と、資金に対する制限を設けるということ。これ以外の制限はなく長大な政治活動があるという理解で良いか。それでも30日は立候補に対する厳しい制限かも。

提言案によれば投票前30日になると政治活動が選挙前政治活動になるということ。また候補者への制限ではあるが政党をしばっていない。

韓国では「予定候補者登録」という仕組みがある。

提言案は、政党支部・資金管理団体・政治団体(複数)について言及していない。現にある政治家の財布を前提にしているのか。政治資金収支報告書で一本化する際の前提となっているものは何か。

          田中久雄委員
          田中久雄委員

 

田中久雄委員

 

イギリスのように選挙運動費用について必須のものを列挙して、その上限額を設定し、上限額の1割を公費負担するとした方が良いのでは。

憲法54条に縛られなくても良いのでは。むしろ解散は例外として考えたほうが良い。参院は任期制、地方議会も統一地方選があるように任期未満は少ない。

本審議会の第一期答申は、衆院選で政党を重視した比例代表制を提起している。選挙前政治活動費用の上限設定が候補者重視で良いのか。現行で政党は選挙運動費用について報告していない。候補者のみが選挙後15日以内の報告。政党にも報告義務を課すべきでは。

現行の収支報告書の保存期間3年を延ばす法改正も併せて。チェックをするのは市民という観点でインターネット公開は良い。

        只野雅人共同代表
        只野雅人共同代表

 

只野雅人共同代表

 

現行憲法下でも衆院議員の任期満了がほんの数回しかないという実情に照らした提言案であろう。

資金規制の設定は難しい課題。田中委員の意見に一考の価値がある。政党の規制対象をどうすべきかについても、妙案がない状態。

収支報告書を出して、たとえば法定額を超えた活動をするという違反をした場合、罰はどれぐらい厳しくなるべきか。

         城倉啓(事務局長)
         城倉啓(事務局長)

 

城倉啓(事務局長)

 

今後の審議会の工程表について、11月までの審議内容と担当者は下記のように確定したい。

7月:政党助成の論点整理(加藤一彦東京経済大学教授)

8月:政治資金収支報告の論点整理(三木由希子共同代表)

9月:公費負担・政治資金・政党助成改正原案(小林幸治委員)

10月:残る規制と罰則規定(坪郷實委員推薦の刑法の専門家)・選挙管理実務論点整理(太田光征)

11月:公費負担・政治資金・政党助成改正案(小林幸治委員・片木淳共同代表)



【今後の選挙市民審議会の予定】

7月16日(月)15:00-17:00東京経済大学第4研究センター4階4422号室

 政党助成制度の論点整理について。加藤一彦東京経済大学教授担当。

 

8月28日(火)15:00-17:00国会議員会館内会議室

 政治資金収支報告の論点整理について。三木由希子共同代表担当。

 

9月27日(木)15:00-17:00国会議員会館内会議室

 公費負担・政治資金・政党助成改正原案。小林幸治委員担当