2018年10月23日、第二期選挙市民審議会の第8回目の審議会が開催されました。
この日のテーマは「衆議院多数派優遇比例代表制、参議院抽選制について」。
岡﨑晴輝委員が担当しました。
岡﨑晴輝委員(スカイプ参加)
衆議院の選挙制度については、多数派優遇の比例代表制の導入を提案する。1988 年から 94年までの国会議事録を渉猟すると「政権選択論」がいかに重視されているかがわかる。政権選択が可能な比例代表制を採るべき。たとえば最高得票の政党が仮に 45%の得票でも 55%の議席を保証するというものだ。阻止条項が合憲として許容されるならば、政権選択を理由とした多数派優遇も許容されるのではないか。
参議院は名称を「市民院」とし、選挙ではなく無作為抽選で選ばれるように変える。国内外で政策決定のためのミニ・パブリックス型の熟議民主主義がすでに試行されている。常設議会への導入も検討され始めている。最新の知見だ。たとえば市民院の権限を次の二つについての拒否権に限定する。1.衆議院で審議が尽くされたかどうか、2.結論が市民良識に著しく反していないかどうか。400名定員のうち半数を 19-22歳のジュニア枠、半数を 61-64歳のシニア枠にすることや、在宅勤務を可能にすること、審議の方法、報酬についても工夫が必要。
政党の確立は大前提。比例代表制の方が政党を育てやすい。民意を反映させることを重視して、わたしも比例代表制論者。政権選択論からの反論への再反論としての多数派優遇を提起した。これは民意反映と政権選択を両立させうる。多数派優遇を廃止した現在のイタリアの選挙制度は五つ星運動を警戒した党利党略によるもの。多数派優遇によっても二大政党にはならない。むしろ中道右派ブロック・中道左派ブロックに分かれた多党制。イタリアのトスカーナ州に多数派優遇と少数派優遇の組み合わせ制度がある。多数派を 55%に抑え、少数派に 45%を保証してはどうか。選挙前に政党連合を作りやすくするという工夫もありうる。連立交渉は「要党」がキャスティングボートを握って、自らの政策をねじ込む危険もある。
抽選制はベルギー規模で社会実験がなされている。「選挙原理主義」に囚われてはいけない。 現役世代が仕事を休むためには別途企業に義務付ける法整備が必要。日本の現状(衆院で与党強行採決⇒参院で追認)を改善したい。裁判員体験者としては市民も対等に審議に参与できることを実感している。基本的には一院制の提案と呼んで構わない。欠格条項については当然備える。
只野雅人共同代表
選挙制度は憲法だけからは一義的に決まらない。憲法の全体構図と現実を見なくては。現在の小選挙区中心の仕組みは政権選択を重視しているにもかかわらず、多くの市民は選択肢を奪われていると感じている。市民の側が選択したと実感できる制度が必要。政権選択論はマニフェスト選挙と結びついている。しかし一回の選挙で全てを選択して、次の選挙まで同じ多数党が着々と実現していくというイメージで政治を捉えるのは難しい。国会の審議も重要ではないか。
複雑な制度の背景には各国固有の政治状況がある。たとえばフランスでは国民戦線をどうするか等。日本で多数派優遇を実施した場合、常に一方向の選択になってしまわないか。抽選制が有効な規模はどの程度か。「有徳な市民」を前提としていないか。抽選制は、小さい自治体で意義があるのでは。決定権がない方が良い。生命倫理等の課題を審議するなど。
三木由希子共同代表
政権選択論と小選挙区制の話の前提は健全な政党があるということ。結局一部を除いて政党が機能していないので、政権選択も機能しない。前提となる政党を育てる必要がそもそもある。
抽選で選ばれた人が、選挙で選ばれた人の決定を覆すということに合意が得られるか。政策決定過程に参与するのとは異なる次元。ジュニア枠・シニア枠は実際の人口構成と異なる。 理解されにくいのでは。
片木淳共同代表
政権選択がそんなに重要ならば比例代表制ではなく単純な小選挙区制を主張しても良さそうだが。例示された 10%の上乗せは、小選挙区制のように比例性を歪めていないか。連立交渉においては似たような政党同士が組むであろうから、そこまで国民から乖離しないのでは。イタリアの多数派優遇比例代表制が現在廃止された経緯は何か。英国でもキャスティングボートの課題はあるのではないか。
抽選制よりも、インターネットからなら国民投票で直接関与することもありうる。ドイツの「計画細胞」のように 4 日間のじっくりとした討議に価値があるのでは。アマチュアの市民院を設置することは一院制になるということか。二院制をどのように捉えるか。
田中久雄委員
政権選択論というのは結果論に過ぎない。選挙制度として目指すのは本末転倒。選挙制度は民意を反映するのが望ましい。ハング・パーラメント(過半数をどこも取れない宙吊り議会) は、世界の趨勢。民意は非常に変動し多様化している。連立交渉に時間がかかるのはしょうがないことと考えている。
自説は単純な比例代表のみの制度。単独過半数はありえず政策協定に基づく連立交渉を常態とする。
抽選制は理想論に聞こえる。400人無作為に選ばれた人に巨大な権力が付与されて良いか。 拒否権限よりも、勧告やアドバイスに権限を落とした方が良いのでは。
小林五十鈴委員
有権者の質も上げなくてはいけない。政治分野における男女共同参画推進法が通った。女性を政治にどんどん参加させなくては。
小選挙区制は民意が反映されない。死に票も多い。本日の提案でも同じじゃないかと思った。日本の国は二大政党制が合わないように思う。
傍聴市民
まだ日本にこのような熱意があることに感動した。抽選制については重大な犯罪者など参政権を制約されている人も選ばれうるのかが気になった。ウエブサイトに掲載されている 『中間答申』を読んで、本日参加した。
【今後の選挙市民審議会の予定】
11月28日(水)15:00-17:00 衆議院第1議員会館 第6会議室
公費負担・政治資金・政党助成改正案。小林幸治委員・片木淳共同代表担当
12月21日(金)10:00-12:00 衆議院第2議員会館 第5会議室
国民投票運動との関係。山口真美委員担当
選挙管理実務論点整理。太田光征事務局担当
1 月29日(火)15:00-17:00 国会議員会館内会議室
請願制度。小林幸治委員担当
国民投票法改正案。山口真美委員担当
選挙管理実務改正案。太田光征事務局担当
地方議会・首長選挙に関する声明。事務局桂協助担当
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